運営 司法書士法人One Succession
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新設分割とは、株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させることをいいます。新設分割する会社を「新設分割会社」といい、新設分割により設立する会社を「新設分割設立会社」といいます。
新設分割によって承継させる権利義務の対価として交付する株式等を新設分割会社に割り当てる場合を「分社型分割」といい、新設分割会社の株主に最終的に割り当てる場合を「分割型分割」といいます。
新設分割を行うことができるのは、株式会社と合同会社です。合名会社や合資会社は会社分割をすることはできません。新設分割設立会社については、特に制限はありませんので、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社のどの会社でも可能です。
新設分割を行うには、まず新設分割計画を作成しなければいけません。2社以上で共同して新設分割を行うときは、共同して新設分割計画を作成しなければいけません。新設分割計画には、
① 新設分割設立会社の目的、商号、本店の所在地、発行可能株式総数及び定款で定める事項
② 新設分割設立会社の役員に関する事項
③ 新設分割設立会社が承継する権利義務に関する事項
④ 新設分割設立会社の株式数等並びに資本金等
⑤ 新設分割設立会社の割り当てに関する事項
などを定めます。
新設分割は新設分割会社の権利義務が新設分割設立会社に承継されます。しかし労働契約の承継については、労働者に与える影響が大きいことから、次の手続きをしなければいけません。
① 労働者の理解と協力を得るための協議
新設分割会社は、会社分割にあたりその雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めなければいけません。
② 労働契約の承継に関する労働者との協議
会社分割に伴う労働契約の承継に関しては、分割契約書を本店に備え置く日までに労働者と協議しなければいけません。
③ 労働協約中の分割契約等に定める部分の労使合意
新設分割設立会社に承継される労働契約は、包括的に承継されるため労働条件等についてはそのまま維持され、労働者に不利益となる変更はできません。
④ 労働者への書面による通知
新設分割会社は、会社分割に関し、労働者との間で締結している労働契約を新設分割設立会社が承継する旨の分割計画における定めの有無、異議申述期限日等を書面により通知しなければいけません。
⑤ 労働者の異議申出
承継される事業に主として従事する労働者を新設分割会社に残留させる場合や承継される事業に主として従事する労働者以外の労働者を新設分割設立会社に承継させる場合は、労働者は異議を申し出ることができます。
新設分割会社は、新設分割計画等の書類又は電磁的記録を本店に備え置かなければなりません。備置開始日は、
① 株主総会の2週間前の日
② 株式買取請求に関する通知・公告の日
③ 新株予約権買取請求に関する通知・公告の日
④ 債権者の異議に関する公告・催告の日
⑤ 新設分割計画作成日から2週間経過した日
のいずれか早い日となります。その日から効力発生日後6か月経過する日まで備え置く必要があります。株主や債権者に事前に情報を開示するためです。
新設分割会社においては、新設分割の効力発生日の前日までに株主総会の特別決議によって、新設分割計画の承認を受けなければなりません。特別決議とは、株主総会で議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な決議のことをいいます。
新設分割により新設分割設立会社に承継させる資産の帳簿価格の合計額が、新設分割会社の総資産額として、法律の規定により算出される額の5分の1を超えない場合は、新設分割会社における株主総会の決議は要しません(簡易新設分割)。
新設分割しようとする会社は、新設分割の効力発生日の20日前までに株主に対して、新設分割をする旨の通知をしなければいけません。この通知に代えて公告とすることでも足ります。
なお、簡易新設分割の場合は、この通知は不要です。
新設分割会社において、新設分割に反対する株主は、会社に対してその所有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます。
株式の買取の価格については、株主と会社の協議によって決めます。効力発生日から30日以内に株式の買取価格の決定につき、協議が整わないときは、その期間満了後30日以内に裁判所に対して価格の決定の申立をすることができます。
なお、簡易新設分割の場合は、株式買取請求はできません。
新設分割会社の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合は、債権者保護手続きを取らなければなりません。
異議を述べる債権者がいなければ債権者保護手続きを不要となります。
異議を述べることができる債権者とは、
① 会社分割後に新設分割会社に対して債務の履行を請求することができなくなる債権者
② 新設分割が分割型分割の場合は、全ての債権者
をいいます。
債権者保護手続きが必要な場合は、新設分割をする旨、新設分割設立会社の商号及び住所、新設分割会社の計算書類に関する事項並びに債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者に対しては、各別に催告をしなれけばいけません。ただし、新設分割会社が、この公告を官報のほか定款で定めた時事に関する日刊新聞紙又は電子公告によりしたときは、知れている債権者への催告は省略できます。
上記期間内に債権者が異議を述べなかった場合は、新設分割について承認したものとみなされます。個別に承認を得る必要がありません。
なお、債権者が異議を述べた場合は、
① 弁済をする
② 相当の担保を提供する
③ その債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託する
という対応をしなければいけません。
ただし、新設分割をしてもその債権者を害するおそれがないのであれば、上記①②③は不要です。
新設分割設立会社は、新設分割に必要な手続きが終了した日から、2週間以内にの本店の所在地を管轄する法務局において、新設分割による設立の登記をしなければいけません。この登記は、新たに設立する会社の代表者が申請することになります。
新設分割はこの設立登記をすることによって効力は生じます。新設分割設立会社は、会社成立の日に新設分割会社の権利義務を新設分割計画の定めに従い承継することになります。
新設分割会社は、新設分割に必要な手続きが終了した日から、2週間以内にの本店の所在地を管轄する法務局において、新設分割による変更の登記をしなければいけません。この変更登記は、設立登記とあわせて申請しなければいけません。
なお新設分割会社が分割に際して、資本金の額の減少、株式の消却等を行うときは、新設分割の変更登記と合わせて変更の登記を申請します。